甲状腺がんは日本で年間約2万人が診断される比較的多いがんで、乳頭がん・濾胞がんは治療後の5年生存率が95%以上と予後良好な疾患です。しかし術後長期にわたる甲状腺ホルモン補充(チラーヂン)とTSH抑制療法、定期的なTg値・超音波検査による再発モニタリングが重要です。健康日記は、服薬記録・検査値・症状(動悸・体重変化・骨粗鬆症リスク)を継続的に管理し、内分泌科への報告を効率化します。
無料で記録を始める →甲状腺がん(Thyroid Cancer)は甲状腺に発生する悪性腫瘍で、ICD-10コードはC73に分類されます。日本で年間約2万人が新規診断され、女性に多く(男女比約1:3)、30〜60歳代に多く見られます。組織型によって予後や治療方針が大きく異なります。
最も多い乳頭がん(約85〜90%)と濾胞がん(約5〜10%)は「分化型甲状腺がん」と総称され、進行が緩やかで術後の予後が非常に良好です。一方、髄様がん(カルシトニン産生)や未分化がんは予後が異なり、治療戦略も変わります。
治療の中心は外科的切除(甲状腺全摘または部分切除)ですが、術後は甲状腺ホルモン補充と再発モニタリングが数十年単位で続くため、長期管理が治療の鍵となります。
甲状腺がんの診断は内分泌外科・甲状腺専門外来・耳鼻咽喉科で行われます。偶発的に超音波検査で発見されることも多いです(甲状腺インシデンタローマ)。
甲状腺全摘術: 両葉を全て切除。リンパ節郭清(中央区域・側頸部)を同時に行う。術後の合併症として反回神経麻痺(声のかすれ)、副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症・テタニー)に注意が必要。全摘後はチラーヂン(レボチロキシン)の生涯服薬が必須。
甲状腺部分切除(葉切除・峡部切除): 低リスク乳頭がん(1cm以下・リンパ節転移なし)では片葉切除が選択されることがある。残存甲状腺があるため、Tg値モニタリングの解釈が全摘と異なる点に注意。
レボチロキシン(チラーヂンS): 術後の甲状腺機能低下を補うと同時に、TSHを抑制して残存がん細胞の増殖刺激を減らすことが目的。再発リスクに応じてTSH目標値が設定される(高リスク: TSH <0.1 mIU/L、中リスク: 0.1〜0.5、低リスク: 0.5〜2.0)。
空腹時(起床直後)に服用し、カルシウム製剤・鉄剤・制酸剤とは4時間以上間隔を空ける必要があります。過剰なTSH抑制は心房細動リスクと骨密度低下(骨粗鬆症)を引き起こすため、長期的な骨密度・心電図管理も重要です。
甲状腺全摘後の残存甲状腺組織の除去(アブレーション)や転移巣の治療に用います。ヨウ素を取り込む分化型がん細胞(乳頭がん・濾胞がん)に有効。治療前にTSH刺激(チラーヂン中断またはrhTSH投与)と低ヨウ素食(2週間)が必要です。
治療後1〜2週間の隔離(放射線管理)が必要。妊娠・授乳中は禁忌。RI治療後6ヶ月〜1年は妊娠を避けることが推奨されます。
レンバチニブ(レンビマ): 放射性ヨウ素不応の局所進行・遠隔転移を有する分化型甲状腺がんに適応。VEGFR阻害薬。高血圧・手足症候群・下痢・疲労が主な副作用。
ソラフェニブ(ネクサバール): レンバチニブと同様の適応。マルチキナーゼ阻害薬。手足症候群・皮膚毒性に注意。
セルペルカチニブ(レットブモ): RET融合遺伝子陽性の甲状腺がん(乳頭がん・髄様がん)に特異的に有効なRET選択的阻害薬。高い奏効率と比較的良好な忍容性。
レボチロキシン(チラーヂン)TSH抑制療法、レンバチニブ(レンビマ・進行例)、ソラフェニブ(ネクサバール・進行例)、セルペルカチニブ(RET融合陽性)、放射性ヨウ素(131I)アブレーション
甲状腺を全摘した場合は一生の服薬が必要です。TSH抑制目的(再発予防)で用量が通常の甲状腺機能より多く設定されますが、再発リスクが下がると用量が調整されます。服薬を中断すると甲状腺機能低下症状(倦怠感・体重増加・浮腫)が現れるため、必ず継続してください。
Tgは甲状腺がん細胞から分泌されるタンパクで、術後に甲状腺組織が残っていないはずの状態で上昇している場合、再発の可能性を示します。TgAbがある場合はTg値が不正確になるため、両方を合わせて評価します。受診ごとに値を記録することで、医師との議論が深まります。
TSH抑制のために甲状腺ホルモンを多めに投与すると、動悸・不整脈・発汗・体重減少・不眠が起きることがあります。これらの症状が強い場合は用量調整が可能です。心房細動リスクがあるため、持続する動悸・脈の乱れはすぐに報告してください。
RI治療後1〜2週間は、他者への放射線被曝を防ぐため個室療養が必要(入院または自宅隔離)です。妊娠中・授乳中は禁止。RI治療後6ヶ月〜1年は妊娠を避けることが推奨されます。治療前の低ヨウ素食(海藻・昆布を2週間避ける)も必要です。
乳頭がん・濾胞がんの再発は頸部リンパ節(80%以上)と肺(次いで骨)が多いです。定期的な頸部超音波と胸部CT、Tg値モニタリングが再発の早期発見に重要です。術後10〜15年経過後も再発することがあるため、長期フォローアップが必要です。