シェーグレン症候群(SS)は涙腺・唾液腺を主標的とした慢性の自己免疫疾患で、ドライアイ・ドライマウスに加え、疲労・関節痛・末梢神経障害・肺・腎臓など全身臓器の炎症が生じることがある指定難病です。SSA(抗Ro)抗体・SSB(抗La)抗体が診断の鍵であり、腺外症状(関節炎・末梢神経炎・血管炎・悪性リンパ腫リスク増加)の管理がQOLに直結します。健康日記は、ドライアイスコア・ドライマウス・疲労・関節痛・服薬確認を毎日記録し、ピロカルピン・ヒドロキシクロロキンの効果とリンパ腫サーベイランスの経過を可視化します。
無料で症状記録を始める →シェーグレン症候群(Sjögren's Syndrome、SS)は、涙腺・唾液腺を主な標的とし、リンパ球が浸潤することで外分泌腺が慢性的に破壊される自己免疫疾患です。ICD-10 コードは M35.0 に分類され、日本では指定難病(難病番号 50)に指定されています。
原発性 SS(他の自己免疫疾患を伴わない)と続発性 SS(関節リウマチ・SLE・強皮症などに合併する)に分類されます。診断の鍵はSSA(抗Ro)抗体・SSB(抗La)抗体の陽性と、口唇唾液腺生検でのリンパ球浸潤(focus score ≥ 1)の確認です。
主な症状はドライアイ・ドライマウスですが、約50%の患者に関節痛・疲労・末梢神経障害・肺間質性病変・腎尿細管アシドーシスなどの腺外症状が生じます。また一般人口に比べ悪性リンパ腫のリスクが10〜20倍高く、定期的なサーベイランスが欠かせません。
原発性 SS 患者の約 5% が悪性リンパ腫(主に MALT リンパ腫・びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫)に移行します。リスク因子は耳下腺腫脹・脾腫・リンパ節腫脹・低補体血症(C4 低下)・クリオグロブリン血症・β2-ミクログロブリン高値・LDH 上昇などです。これらの所見がある場合は血液内科への紹介と定期的なサーベイランスが必要です。
シェーグレン症候群の診断はリウマチ科・内科が主体となり、眼科・口腔外科・歯科と連携して行います。
ピロカルピン(サラジェン・唾液・涙液分泌促進)、セビメリン(塩酸セビメリン・唾液分泌促進)、ヒドロキシクロロキン(プラケニル・関節痛・疲労)、ジクアス(ジクアホソル点眼・ドライアイ)、ムコスタ点眼(レバミピド・角膜保護)、ベリムマブ(ベンリスタ・重症SS)
人工涙液・ヒアルロン酸点眼: ドライアイの基本対症療法。1 日数回〜頻回点眼。防腐剤なしのタイプが角膜への影響が少ない。
ジクアホソルナトリウム点眼(ジクアス): 涙液分泌を促進するムチン産生促進型点眼薬。1 日 6 回点眼。ドライアイの症状改善に有効。
レバミピド点眼(ムコスタ点眼): ムチン産生を促進し角膜上皮を保護。1 日 4 回点眼。
ピロカルピン塩酸塩(サラジェン): ムスカリン M3 受容体を刺激し唾液・涙液の分泌を促進。1 回 5mg を 1 日 3〜4 回。発汗・頻尿・消化器症状に注意。
セビメリン塩酸塩(エボザック): ピロカルピンと同様のムスカリン受容体刺激薬。唾液分泌促進作用。1 回 30mg を 1 日 3 回。
ヒドロキシクロロキン(プラケニル): 抗マラリア薬として開発された免疫調節薬。疲労・関節痛・皮疹・全身症状に有効。日本では 2015 年に SLE・皮膚エリテマトーデスに適応承認。SS の全身症状への使用はオフラベルだが国際的に広く推奨される。網膜症リスクのため定期的な眼科スクリーニングが必要。維持量は体重ベース(5mg/kg/日以下)。
NSAIDs: 関節痛・筋肉痛・発熱の対症療法として使用。腎機能・消化管に注意。
ステロイド(プレドニゾロン等): 重症の腺外症状(肺間質性病変・血管炎・血球減少)に使用。長期使用は副作用(骨粗鬆症・感染症リスク)を伴う。
免疫抑制薬(アザチオプリン・ミコフェノール酸モフェチル): 重症臓器病変のステロイド減量目的で使用。
ベリムマブ(ベンリスタ): 抗 BLyS 抗体。重症 SS への適応が国際的に検討されている生物学的製剤。
現状では完治は難しいですが、対症療法と全身管理で多くの方がQOLを維持できます。ドライアイにはジクアス・ムコスタ等の点眼薬、ドライマウスにはピロカルピン・セビメリンの分泌促進薬、全身症状にはヒドロキシクロロキンが用いられます。定期的な経過観察で悪性リンパ腫への移行を早期に発見することも重要です。
約50%で関節痛・疲労・末梢神経障害などの腺外症状があります。肺間質性病変・腎尿細管アシドーシス・血管炎・悪性リンパ腫リスクの増加なども含まれます。全身のモニタリングが重要です。
一般人口の10〜20倍のリスクがあります。疲労の急増・リンパ節腫脹・LDH上昇には注意が必要です。原発性 SS の約5%が悪性リンパ腫に移行するとされており、定期的なサーベイランス検査(血液検査・画像)を欠かさないことが大切です。
SSA(抗Ro)抗体陽性の場合、抗体が胎盤を通過し胎児に先天性房室ブロックが生じるリスク(約2%)があります。妊娠前・妊娠中のモニタリングが必要で、リウマチ科・産科が連携した管理が推奨されます。妊娠を考えている方は必ず主治医に相談してください。
RAと合併することもあります(続発性シェーグレン症候群)。RAは関節破壊が主体で滑膜炎が特徴的であるのに対し、シェーグレン症候群は涙腺・唾液腺を主標的とした乾燥症状と全身炎症が主体です。どちらも自己免疫疾患でリウマチ科が主科となりますが、シェーグレン症候群は眼科・口腔外科との連携も重要です。