乾癬は皮膚の過剰な炎症により鱗屑(スケール)を伴う紅斑・プラークが繰り返し現れる慢性炎症性疾患で、関節痛・爪の変形を伴う関節症性乾癬も約30%に合併します。IL-17・IL-23・TNFを標的とする生物学的製剤の登場により、中等症〜重症例でも皮疹のほぼ完全消失(PASI 90〜100)が可能になりましたが、長期管理と副作用モニタリングが重要です。健康日記は、PASIスコア・皮疹面積・関節痛・服薬記録・フレアの引き金(ストレス・飲酒・感染症)を継続記録し、治療効果と生活の質の変化を可視化します。
無料で症状記録を始める →乾癬(Psoriasis)は、免疫系の異常活性化により皮膚細胞が過剰増殖し、銀白色の鱗屑(スケール)を伴う紅斑・プラークが全身に繰り返し現れる慢性炎症性疾患です。ICD-10 コードは L40 に分類されます。日本では約43万人が罹患しており、欧米では人口の2〜3%に相当します。
乾癬の病態の中心はTヘルパー17(Th17)細胞が産生するIL-17やIL-23による炎症経路の過活性化です。皮膚症状(尋常性乾癬)だけでなく、約30%の患者に関節痛・腫脹を伴う関節症性乾癬(乾癬性関節炎)が合併し、放置すると不可逆的な関節破壊が進む可能性があります。また、重症乾癬は心血管疾患・糖尿病・メタボリックシンドロームとの関連も指摘されており、全身疾患として管理することが重要です。
乾癬は感染症ではなく、人に移ることはありません。ストレス・感染症・特定の薬剤・飲酒・喫煙・外傷などがフレア(悪化)の引き金となります。
乾癬の重症度は治療選択に直結するため、定期的な評価が重要です。
外用ステロイド: 乾癬の基本治療薬。ストロングクラス(リンデロン-V・ボアラ)〜ベリーストロングクラス(デルモベート・ダイアコート)を部位・重症度に合わせて選択。長期連用は皮膚萎縮・毛細血管拡張・ステロイド依存のリスクあり。
活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール): ドボネックス・オキサロール。ステロイドとの配合剤(ドボベット)が使いやすく効果的。顔面・外陰部には使いにくいが、ステロイドの副作用を軽減できる。
タクロリムス外用薬: 顔面・間擦部など敏感な部位にも使いやすいステロイド代替薬。
ナローバンドUVB(NB-UVB): 皮膚科で行う紫外線照射療法。中等症〜重症の尋常性乾癬・滴状乾癬に有効。週2〜3回の通院が必要だが、全身投与薬の副作用なく優れた効果が得られる。エキシマレーザーによる局所照射も有効。
メトトレキサート(MTX): 乾癬・関節症性乾癬に長年使われる免疫抑制薬(週1回服用)。効果は確実だが、肝毒性・骨髄抑制のモニタリング(定期血液検査・必要に応じて肝生検)が必要。葉酸の併用でMTX副作用を軽減できる。妊娠中は禁忌(避妊が必要)。
シクロスポリン: 急速な効果発現が特徴で、急性増悪期や重症例に使用。高血圧・腎機能障害・感染症リスクに注意。長期連用は避けることが望ましい。
アプレミラスト(オテズラ): PDE4阻害薬(内服)。生物学的製剤に比べ効果はやや劣るが、注射不要で感染症リスクが低い。副作用として下痢・頭痛が起こることがある(通常は数週間で軽快)。
TNF阻害薬: アダリムマブ(ヒュミラ)・エタネルセプト(エンブレル)。皮疹と関節症状の両方に効果があり、関節症性乾癬の第一選択として確立されている。結核スクリーニングが必須。
IL-17阻害薬: セクキヌマブ(コセンティクス)・イキセキズマブ(トルツ)・ビメキズマブ(ビンゼレックス)。TNF阻害薬を上回る皮疹消失効果(PASI 90〜100達成率が高い)。炎症性腸疾患の合併には注意が必要。
IL-23阻害薬: グセルクマブ(トレムフィア)・リサンキズマブ(スキリージ)・チルドラキズマブ(イルミア)。投与間隔が長く(Q8W〜Q12W)、安定したPASI 90〜100を維持できる。安全性プロファイルが良好。
IL-12/23阻害薬: ウステキヌマブ(ステラーラ)。IL-12とIL-23の両方を阻害。投与間隔が長い(Q12W)が、新規IL-23阻害薬と比較すると効果はやや劣る。
外用ステロイド(デルマベース・デルモベート)、カルポトリオール/ベタメタゾン配合軟膏(ドボベット)、メトトレキサート、アプレミラスト(オテズラ)、セクキヌマブ(コセンティクス・IL-17A阻害薬)、イキセキズマブ(トルツ・IL-17A阻害薬)、グセルクマブ(トレムフィア・IL-23阻害薬)、リサンキズマブ(スキリージ・IL-23阻害薬)
多くの場合、生物学的製剤は長期継続が必要です。IL-23阻害薬(グセルクマブ・リサンキズマブ)はPASI 90〜100達成後に投与間隔を延長(Q12W→Q16W以上)できる場合があります。試験的中止により再燃した場合も、多くは再投与で再び効果が得られます。中止の判断は皮膚科専門医と相談してください。
乾癬を悪化させる主な引き金:①ストレス(心理社会的ストレス)、②感染症(特に連鎖球菌性咽頭炎)、③特定薬剤(β遮断薬・リチウム・NSAIDs)、④過度の飲酒、⑤喫煙、⑥外傷(ケブネル現象)です。これらを避けることで、フレアの頻度と重症度を減らすことができます。
乾癬患者が関節痛・腫脹・朝のこわばりを訴える場合、関節症性乾癬の疑いがあります。CASPAR基準(乾癬の存在+5項目のうち3点以上)で診断されます。早期診断・治療が関節破壊予防に重要で、TNF阻害薬・IL-17阻害薬・IL-23阻害薬は皮疹と関節症状の両方に効果があります。リウマチ科または皮膚科への受診をお勧めします。
重症乾癬は全身性炎症のため、心筋梗塞・脳卒中・糖尿病・高血圧・脂質異常症のリスクが健常者より高いことが知られています(乾癬性炎症の炎症バイオマーカーが動脈硬化を促進)。乾癬の治療(特に生物学的製剤による全身性炎症の抑制)が心血管リスクの低減につながるというエビデンスもあります。
地中海食(魚・野菜・オリーブオイル)が乾癬の炎症を軽減する可能性が研究で示されています。肥満は乾癬を悪化させ生物学的製剤の効果を下げるため、適正体重の維持が重要です。グルテンフリー食は乾癬とセリアック病を合併する場合に有効という報告がありますが、一般的な乾癬への効果は限定的です。