多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢女性の10〜15%に発症する最多の内分泌疾患で、排卵障害・月経不順・男性ホルモン過剰(多毛・にきび)・インスリン抵抗性が主な特徴です。放置すると2型糖尿病・代謝症候群・子宮内膜癌リスクが高まるため、長期的な管理が必要です。健康日記では、生理周期・症状の強度・体重・血糖値・服薬確認を毎日記録し、メトホルミン・低用量ピル・クロミフェンなど治療薬の効果と排卵回復の過程を可視化します。
無料で症状記録を始める →多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovary Syndrome、PCOS)は、卵巣内に多数の小さな嚢胞(卵胞)が形成され、排卵障害・月経不順・アンドロゲン(男性ホルモン)過剰・インスリン抵抗性を特徴とする内分泌・代謝疾患です。ICD-10 コードは E28.2 に分類されます。
診断はロッテルダム基準(2003年)に基づき、①月経不順・無排卵、②高アンドロゲン血症(臨床的または生化学的)、③超音波による多嚢胞性卵巣所見の3項目のうち2項目を満たすことで診断されます(他の原因を除外した上で)。
主な症状は月経不順・無月経・多毛・にきびですが、長期的には2型糖尿病(5〜8倍のリスク)・代謝症候群・心血管疾患・子宮内膜癌リスクの増大が問題となります。生涯を通じた管理と定期的な受診が必要です。
PCOSの診断は婦人科・産婦人科が主体となり、内分泌内科と連携して行います。
メトホルミン(グルコファージ・インスリン抵抗性改善)、低用量ピル(OC/LEP・月経調整・アンドロゲン抑制)、クロミフェン(クロミッド・排卵誘発第一選択)、レトロゾール(フェマーラ・クロミフェン抵抗例)、スピロノラクトン(多毛・にきびへの抗アンドロゲン作用)、腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD・薬剤抵抗例)、生活習慣療法(低GI食・週150分の有酸素運動・体重5〜10%減少)
メトホルミン(グルコファージ): ビグアナイド系糖尿病治療薬。PCOSのインスリン抵抗性を改善し、アンドロゲン産生を抑制することで生理周期の正常化・排卵回復・体重管理に寄与します。日本では保険適用外(自由診療)となるケースが多いため、主治医と相談の上で使用します。消化器症状(悪心・下痢)は食事と一緒に服用することで軽減できます。
生活習慣療法: 過体重・肥満のPCOS患者には第一選択。低GI食(白米→玄米・雑穀、砂糖・精製炭水化物を制限)・地中海食・週150分以上の有酸素運動(ウォーキング・水泳)が推奨されます。体重の5〜10%減少で排卵回復・ホルモン改善が期待できます。
低用量ピル・OC/LEP(経口避妊薬/低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬): PCOS の月経調整・子宮内膜保護・アンドロゲン抑制(多毛・にきびの改善)に広く用いられます。抗アンドロゲン作用の強いプロゲスチン(ドロスピレノン・シプロテロン酢酸エステル含有製剤)が特に多毛・にきびに有効です。妊娠希望時には中止し、排卵誘発療法に移行します。
スピロノラクトン: アルドステロン拮抗薬であり、高用量(100〜200mg/日)で抗アンドロゲン作用を発揮します。多毛・にきびへの効果が期待できます。妊娠中は禁忌のため、服薬中は避妊が必要です。
クロミフェン(クロミッド): 選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)。排卵誘発の第一選択薬。内因性ゴナドトロピン分泌を増加させ排卵を誘発します。多胎妊娠リスクに注意が必要です。
レトロゾール(フェマーラ): アロマターゼ阻害薬。クロミフェン抵抗例・BMI高値例に有効で、多胎リスクが比較的低い。日本では排卵誘発への保険適用は限定的のため、施設により対応が異なります。
ゴナドトロピン注射(FSH / hMG 製剤): クロミフェン・レトロゾール無効例に使用。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)リスクの管理が必要で、専門施設で慎重に行います。
腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD: Laparoscopic Ovarian Drilling): 薬剤抵抗例に対する手術療法。卵巣表面に小孔を開けることでアンドロゲン産生を低下させ、自然排卵を促します。
PCOSは排卵障害による不妊の最多原因です。しかし適切な治療(クロミフェン・レトロゾール・ゴナドトロピン注射・腹腔鏡下卵巣多孔術)で多くの方が妊娠しています。BMI改善だけで自然排卵が回復することもあります。不妊治療専門クリニックへの早期受診が推奨されます。
PCOSの約60〜80%にインスリン抵抗性があります。インスリン過剰が卵巣でのアンドロゲン(男性ホルモン)産生を促進し、排卵障害・多毛・にきびを悪化させます。メトホルミンはインスリン抵抗性を改善し、生理周期の正常化や不妊治療の成功率向上に寄与します。
過体重・肥満のPCOS患者では、体重の5〜10%減少だけで排卵が回復し、ホルモンバランスが改善するケースが多くあります。食事(低GI・地中海食)・運動(週150分の有酸素運動)が第一選択です。体重が正常でも症状が続く場合は薬物療法を検討します。
長期的に2型糖尿病リスク(5〜8倍)、代謝症候群、心血管疾患リスクが高まります。また、長期無排卵は子宮内膜増殖症・子宮内膜癌のリスクを高めるため、定期的な内膜評価(超音波)が重要です。定期受診と生活習慣管理が生涯必要です。
なりません。低用量ピルはPCOSの月経調整・多毛・にきび治療に用いられますが、服薬終了後の妊孕性に悪影響はありません。むしろ子宮内膜の保護効果があります。妊娠を希望する時点でピルを中止し、必要に応じて排卵誘発療法に移行します。