甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は甲状腺ホルモンの過剰産生により、動悸・頻脈・体重減少・発汗・手の震え・疲労・眼球突出(バセドウ眼症)を引き起こす自己免疫疾患で、国内推定60〜100万人(女性に多い)が罹患しています。チアマゾール(MMI)による抗甲状腺療法が第一選択ですが、無顆粒球症(0.1〜0.5%)という重篤な副作用があり、発熱・咽頭痛が出た場合は即日受診が必要です。健康日記は、TSH・FT4値・心拍数・体重・症状スコアを継続記録し、チアマゾールの用量調整と甲状腺クリーゼの早期発見に役立てます。
無料で記録を始める →甲状腺機能亢進症(バセドウ病・Graves病)は、自己抗体(TSH受容体抗体・TRAb)が甲状腺を持続的に刺激し、甲状腺ホルモン(FT3・FT4)が過剰産生される自己免疫疾患です。ICD-10コードはE05(甲状腺中毒症)に分類されます。
甲状腺ホルモンの過剰により、全身の代謝が亢進します。主な症状は動悸・頻脈(安静時心拍数100回/分以上)・体重減少(食欲は増進しているのに痩せる)・発汗過多・暑がり・手の細かい振戦(震え)・倦怠感・筋力低下・甲状腺腫大(のどの腫れ)・眼球突出(バセドウ眼症)です。放置すると甲状腺クリーゼ(生命を脅かす超急性増悪)に至る危険があります。
診断は血液検査でTSH(著明低値)・FT4(高値)・TRAb(陽性)を確認し、甲状腺エコーおよびシンチグラフィ(取り込み亢進)で確定します。内分泌科・代謝内科での専門的な管理が必要です。
甲状腺機能亢進症の治療では、チアマゾールの用量を血液データに応じて細かく調整する必要があります。受診間隔が1〜2ヶ月あく場合でも、日々の脈拍数・体重・体温・自覚症状を記録しておくことで、医師が治療効果を正確に評価できます。また副作用(特に無顆粒球症)は服薬開始後3ヶ月以内に多く発生するため、この時期の体温と咽頭痛の記録は特に重要です。
チアマゾール(メルカゾール・MMI): バセドウ病の第一選択薬。甲状腺ホルモンの合成を阻害します。1日5〜30mgを1〜3回に分けて服用。効果が出るまで数週間かかります。最重篤な副作用は無顆粒球症(発生率0.1〜0.5%)で、服薬中に39℃以上の発熱や強い咽頭痛が出た場合は即日受診が必要です。
プロピルチオウラシル(PTU): 妊娠初期(〜16週)のバセドウ病治療の第一選択薬。チアマゾールと異なりT4からT3への末梢変換も阻害します。肝毒性のリスクがあるため、妊娠初期以外ではMMIが優先されます。1日150〜450mgを3回に分けて服用。
プロプラノロール(β遮断薬): 抗甲状腺薬の効果が出るまでの期間、頻脈・動悸・振戦・不安感を速やかに和らげます。甲状腺ホルモン自体には作用しませんが、交感神経症状の対症療法として有効です。
ルゴール液(ヨウ化カリウム): 甲状腺クリーゼの緊急治療や外科切除前の術前処置として使用。甲状腺ホルモンの放出を一時的に抑制します。
プレドニゾロン(ステロイド): 中等症以上のバセドウ眼症に対してステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン大量静注)が用いられます。
放射線ヨウ素療法(131I): 外来で1回内服するだけで実施できる根治療法。放射性ヨウ素が甲状腺に選択的に集積し、甲状腺細胞を破壊します。妊娠中・授乳中は禁忌。甲状腺機能低下症になる可能性があり、その後は甲状腺ホルモン補充が必要です。
甲状腺亜全摘術: 外科的に甲状腺のほとんどを切除する根治療法。薬剤アレルギーがある方・甲状腺が著しく腫大している方・早期の根治を希望する方に適応されます。術後甲状腺機能低下症・術中反回神経麻痺・副甲状腺機能低下症に注意が必要です。
甲状腺クリーゼは、甲状腺機能亢進症が急激に悪化した生命を脅かす緊急状態です。致死率は約10〜30%とされています。発熱(38℃以上)・頻脈(130回/分以上)・中枢神経症状(意識障害・けいれん)・消化器症状(嘔吐・下痢)・心不全が急速に進行します。手術・外傷・感染症・ヨード造影剤・服薬中断などが誘因になります。
疑わしい場合は直ちに救急受診が必要です。治療は集中治療室(ICU)での管理のもと、抗甲状腺薬(PTU大量投与)・ルゴール液・β遮断薬・ステロイド・解熱・補液が行われます。甲状腺クリーゼの予防のためにも、普段から服薬を中断しないこと、発熱時は早めに主治医に連絡することが重要です。
抗甲状腺薬で約30〜40%が寛解します。再発した場合は放射線ヨウ素療法か手術を検討します。
最も重篤な副作用は無顆粒球症(発熱・咽頭痛・倦怠感)。服薬中に39℃以上の発熱が出たら即日受診を。
妊娠初期はPTU、妊娠中期以降はMMIに切り替えるのが原則です。甲状腺の管理は妊娠・出産に直結します。
国内外で広く行われる安全な根治療法ですが、甲状腺機能低下症になる可能性があり、生涯にわたる甲状腺ホルモン補充が必要になる場合があります。
軽症は点眼・UV保護。中等症以上はステロイドパルス療法・放射線照射・眼科手術が適応になります。